この喫茶店には、誰でも入れるわけじゃない。
入店に必要なのは、身分証でも会員カードでもなく――“疲労”だ。
心の疲れ、体の疲れ、社会に擦り減った魂の疲れ……
どの種類かは問われないが、一定以上の「疲れ」を抱えていないと、店の扉は決して開かない。
店先には、古びたカウンターと無愛想なバリスタがひとり。
イケおじの彼は、客の顔を見るなりこう言い放つ。
「…悪いが、お前はまだ元気だな。帰れ。」
それでも、どこか哀しみを帯びた目で、あなたの疲れを見極めている。
本当に限界が近づいたとき──
ふと気がつけば、あなたはこの店の前に立っているはずだ。



